周りの人の声が聞き取りにくかったり、理解しづらい場合は、聞こえが低下しはじめている兆候かもしれません。聞こえの低下は徐々に進行することが多く自分では気づきにくいため、治療や処置が遅れることがあります。
聞こえの健康のための最適な方法は、医療機関で聴力検査を受けることです。その結果をもとに、次のアクションが決まります。定期的な聞こえをチェックは、聞こえの健康を維持するために不可欠です。
聴力検査とは?
聴力検査は、幅広い周波数 (ヘルツ (Hz) またはキロヘルツ (kHz) で測定) の音が日常生活に支障ない程度に聞こえているかを調べるための検査です。周波数は音の高さを示し、高い音が高周波数に相当します。
聴力検査において最も一般な検査は、言葉の聞き取りに重要な周波数の検査です。標準的な聴力検査は、音声範囲において最大約10個の周波数を測定することができます。
聴力検査の目的は、各周波数で聞こえる最も低い聴力レベルを判定することです。聴力レベル (低から高) はデシベル (dB) 単位で測定されます。検査結果は、聴力レベルを視覚的に表現したオージオグラムに記録されます。
聴力検査が日常生活において重要な理由とは?
難聴を放っておくと、社会的な影響を及ぼす可能性があります。周囲との円滑なコミュニケーションが難しいために、さまざまな活動について行きにくく感じたり、楽しめないと感じることがあります。社会的な活動に参加することを避けて、社会的孤立につながる場合もあります。
聞こえは日常生活に欠かせないものです。家族や同僚、友人だちと会話をしたり、電話で話したり、テレビを観ることもあります。アクティブ・リスニング (誰かと会話をすること)、およびパッシブ・リスニング (自然の音やBGMなど注意を払わずに聞くこと)を含め、私たちは毎日耳を使っています。
聴力検査は、聴力の健康状態を管理するための簡単な方法であり、活動的な生活を維持するために大切です。
聴力検査と聞こえのチェック
聴力検査には、総合的な聴力検査と聞こえのチェックの2つのカテゴリーがあります。
聴力検査とは?
医療機関では、総合的な聴力検査として主に以下のことを行います。
- 病歴聴取
- 中耳検査
- 純音聴力検査 (最大約10個の周波数における周波数検査)
- 語音検査
聴力検査は、騒音が聴力検査の邪魔しないように防音室で実施します。ヘッドフォンや耳栓に似た小さなフォームチップを装着して、テスト音を発信します。
聞こえのチェックとは?
聞こえのチェックは、シンプルな聴力テストであり、通常は10個の周波数で検査する代わりに4つの周波数を用いて行われます。このテストはオンラインで行います。
聞こえのチェックは聴力検査ではありません。あなたの聴力について一般的な概念および耳鼻咽喉科で詳細な聴力検査を受けるべきかどうかを提示するものです。
オンライン聞こえのチェックはこちらでお試しいただけます。
聴力検査を受ける必要はありますか?
難聴はあらゆる年齢においてみられます。原因としては、医学的な問題、事故、騒音への曝露、加齢に伴う難聴、原因不明などさまざまです。難聴の原因にかかわらず、症状に気づき始めたら耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けることをお勧めします。
難聴の最も一般的な原因は?
一般的な難聴は加齢に関連しており、時間の経過とともにゆっくりと聞こえが低下し、特に高齢になるにつれて多くみられます。私たち誰もが、加齢とともに高周波の音が聞き取りにくくなります。その変化にほとんど気づかない人もいれば、補聴器が必要になる人もいます。
若い時は聴力に問題がなかった、という高齢者において、難聴の原因として最も多いのは加齢に伴う難聴です。騒音レベルが高い職業に従事している場合は、騒音曝露による難聴のリスクがあります。
難聴の詳細については、こちらの難聴に関するページをご覧ください。
聴力検査が必要になるサインは?
聴力検査が必要であることを示す幾つかのサインがあります。
- 混み合った部屋や賑やかなレストランで、会話が聞き取りにくい
- 相手がよく口ごもると感じる
- 家族や友人に、聞こえていないの?と言われたり、何?とたずねることがある
- 他人と会話をしていて、聞き返すことがある
- テレビの音量が大きすぎると言われる
これらは加齢に伴う難聴、または加齢とともに起こる聞こえの低下がある場合に見られる一般的なサインです。他にも、定期的に聴力検査を受けた方が良いとされるサインがあります。
- 騒がしい環境で働いている
- 騒音下での撮影や、騒音が大きい機材(草刈り機、電動工具など)を使用している
- 音楽を大音量で聴くことが多い(ライブまたは録音にて)
- 家族のなかに難聴の人がいる
難聴には、感染症、耳垢の蓄積、投薬、頭部外傷など医学的な原因もあります。医学的に問題がある場合や、すでに難聴であることが分かっている場合は、耳鼻咽喉科の医師へご相談ください。
聞こえの状態を管理するためには、定期的に聴力検査を行いましょう。また、ご自身でWebサイトのオンライン聞こえのチェックを行うことで、聴覚ケアの専門家へ相談するタイミングを測ることができます。
聴力検査に期待できることは?
聴力検査では、外耳から脳まで全ての聴覚プロセスを検査します。それにはさまざまな検査がありますが、いずれも難しい検査ではありません。
どの聴力検査が必要かについては、耳鼻咽喉科の専門医が判断します。検査によっては30~60分かかることもあります。
聴力検査の前に
聴力検査の前に、基本的には以下のようなことを行います。
- まず、あなたの聴力について聴覚ケアの専門家と話をします。これは、聴覚ケアの専門家があなたとあなたの聴力について、深く理解するためです。
- 次に、耳鏡を使って外耳道を視診し、耳垢などの外耳道を塞ぐものがないことを確認します。耳垢は聴力検査に影響を及ぼす可能性があるからです。
- 中耳検査は、耳の感染症や中耳に起こりうる問題を調べる検査です。この検査は、鼓膜の動きをチェックするために、外耳道にわずかな圧力を加えるティンパノメーターという装置を使用しておこないます。検査中に、いくつかの音が再生されることがあります。音を再生すことにより、鼓膜の動きだけでなく、中耳の筋肉の反応を確認します。
聴力検査
聴力検査には、検査音を再生して反応をみる方法として、純音聴力検査と語音聴力検査の2つの検査があります。
純音聴力検査とは?
純音聴力検査は、さまざまな周波数の音を提示して、各周波数で聞こえる音の最小レベルを見つけて、聴覚感度レベルを確認する検査です。難しい検査ではありませんが、非常に小さい音に反応する必要があるので、集中力が必要です。
小さなビーという音やトーンが聞こえるたびにボタンを押して、聞こえたことを知らせます。これらの音は、左右の耳の周波数レベルを検査するために流れます。聞こえた、という反応がオージオグラムに記録され、聴力を視覚的に示することができます。
この検査には、空気伝導と骨伝導の2つのパートがあります。空気伝導検査ではヘッドフォン等を使用しますが、骨伝導検査では耳の後ろの骨に取り付ける骨振動子という小さい器具を使用します。これにより聴覚ケアの専門家は、外耳、中耳、内耳がどの程度機能しているかを知ることができます。
語音聴力検査とは何ですか?
語音聴力検査は、包括的な聴力検査のひとつです。この検査では、ヘッドフォン(またはインサート)を装用し、スピーカーから流れる単語や文章を聞いて、それを復唱又は回答用紙に記入します。
語音聴力検査は、会話を聞き取り理解できる最小の音量を測るものであり、小さい音量で行われます。また、会話を理解する最大の音量を測るために、あるいは快適な音量の上限を測るためにも行われます。
静かな屋ではなく、騒がしい環境で行われる語音聴力検査もあります。騒音検査を実施すると、レストランや混雑した空間などの日常生活のシーンで実際どのように聞こえるかを、現実的に評価できます。
聴力検査結果の見方
聴力検査が終了すると、聴力をグラフで表現したオージオグラムを受け取ります。
このグラフは、右耳 (赤い線) と左耳 (青い線) の各周波数で聞こえた最小レベルを示しています。周波数レベルは水平軸上にあり (左が低く右が高い) 、dB HL単位の音の大きさ(音圧レベル)は垂直軸上にあります (上が低く下が高い) 。
聴力検査には合格点も不合格点もありません。聴力検査では、どの難聴レベルに分類されるかを評価します。
難聴の程度とは?
難聴は、以下の5つの程度に分類されます。
- 軽度難聴:26〜40 dB HL
- 中等度難聴:41〜55 dB HL
- 中高度難聴:56〜70 dB HL
- 高度難聴:71〜90 dB HL
- 重度難聴:91 ~ 100 dB HL
聴力レベル(dB HL)の数値が高いほど難聴の程度が高くなり、聴力への影響が大きくなります。25 dB HL以下の場合、正常な聴力とみなされます。
難聴の程度は日常生活にどう影響しますか?
- 軽度難聴 : 日常生活には多くの小さな音が含まれており、軽度難聴になると聞き逃すことがあります。日常の小さい音には、人の呼吸音や、木の葉がカサカサと鳴る音、人のささやき、冷蔵庫のブ―ンという音、猫がゴロゴロと鳴く音、水が滴る音などがあります。軽度難聴になると、静かな環境においては円滑にコミュニケーションをとれますが、背景に雑音がある騒がしい環境では、特定の子音(「s」 、 「f」 、または 「th」)で始まる単語が聞き取りにくいことがあります。
- 中等度難聴 : 中等度難聴になると、日常生活の多くの場面で、会話の聞き取りや理解がより困難になります。会話を続けるにはさらに努力が必要で、静かな場所でも多くの言葉を聞き取れなかったり、聞き間違えることがあります。背景に雑音があると、通常の会話にもついていけないこともあります。その他、聞き逃す可能性がある音には、笑い声、雨の降る音、コーヒーを淹れる音などがあります。
- 中高度難聴 : 中等度から高度の難聴になると、より多くの場面で会話が理解しにくくなり、騒がしい環境での会話の理解はさらに困難になります。テレビやラジオは通常の音量では理解できず、理解するにはより大きな音量にする必要があります。その他、日常的な音のなかで聞き逃しやすい音には、水が流れる音、目覚まし時計、子どもの遊び声、人通りが多い通りの騒めき、電動歯ブラシや洗濯機の音などがあります。
- 高度難聴 : 高度難聴になると、通常または比較的大きな音量でも、ほとんどの会話を理解することが困難になります。周囲が静かな環境の場合、大きな声で行う会話は理解できるかもしれません。その他、聞き逃す可能性がある日常的な音としては、ドアベルや電話、交通騒音、掃除機、トイレの水の流れ、仕事中の人の声やオフィスのさまざまな音などがあります。
- 重度難聴 : 重度難聴になると、芝刈り機、オートバイ、救急車のサイレン、ミキサーなど、非常に大きな音しか聞こえません。通常の音量での会話は聞き取れず、叫んでも聞き取れないことがあります。重度難聴になると、一般的には人工内耳を使用したり、手話や読唇法に頼って会話の理解を助けることがあります。
聴力検査の結果が出たら、次はどうすればよいですか?
聴力検査で難聴と診断された場合は、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
永久的な難聴の治療法はありませんが、補聴器などの装置によって聞こえを補うことがことができます。補聴器が必要な場合は、聴覚ケアの専門家が一人ひとりのニーズに合った最適な補聴器を見つける手助けをおこないます。 フィリップス ヒアリンク補聴器についてはこちらをご覧ください。
定期的に、または聴覚ケアの専門家が指定する頻度で、聴力を管理していくことが大事です。定期的に聴力検査を行うことをお勧めします。もし聴力に問題を感じたら、早めに耳鼻咽喉科医院へ相談し、快適な聞こえを維持できるよう心がけましょう。